小児の感染症とは

小児の感染症

この世に生を受けた赤ちゃんは、母体から様々な免疫を授かリますが、やがて成長と共に減衰していきます。つまり様々な感染症に罹患しやすくなっていきます。そもそも感染症とは、ウイルスや細菌等の病原体が体内に侵入し、それが増殖していくことでいろいろな症状がみられるようになります。これを発症と言います。罹患した感染症によっては、重篤化する可能性の高い病気もあります。これらについてはあらかじめワクチンを接種することで、その感染症に対する免疫をつけ、重症化しないようにする予防接種を行っていきます。このような感染症に関する診療も当クリニックでは行っています。

発熱の症状があれば、来院前にお電話ください

37.5度以上の発熱や咳がある、新型コロナウイルス感染症やはしか等、重症化しやすい、あるいは感染力の強い感染症の罹患が疑われる場合は、来院前に一度お電話にてご連絡ください。連絡を受けたスタッフが、来院方法を説明いたしますので、その指示に従うようにしてください。これは院内にいる一般の患者さまや当クリニックスタッフへの感染リスクを避けるための措置でもあります。ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

小児が罹患しやすい感染症

  • 新型コロナウイルス感染症
  • 突発性発疹
  • インフルエンザ
  • RSウイルス感染症
  • ヒトメタニューモウイルス感染症
  • マイコプラズマ感染症
  • アデノウイルス感染症
  • 溶連菌感染症
  • 手足口病
  • ヘルパンギーナ
  • りんご病(伝染性紅斑)
  • 水ぼうそう(水痘)
  • 急性胃腸炎
  • ノロウイルス など

熱性けいれん

38度以上の発熱があるときに見受けられる突然起きる一過性のけいれん発作のことです。生後6ヵ月の乳児~6歳までの幼児に起こりやすく、はっきりとした原因が無い発作のことです。

けいれんは発熱してから24時間以内に現れることが多いとされています。主な症状は、意識を突然失う、全身が硬直し、体がガクンガクンと震える、白目を剥く、口から泡を吹く、唇が紫色になっている(チアノーゼ)等がみられるようになります。通常であれば2~3分程度で治まります。けいれんが5分以上続く場合は、救急車を呼ぶなどの対応をしてください。

治療について

けいれんが治まっている状態であれば、熱性けいれんの治療を行うことはありません。発熱に対して解熱剤を使う、あるいは症状に対する治療が行われることはあります。

新型コロナウイルス感染症

SARS-CoV-2と呼ばれるウイルスに感染することで引き起こされる感染症が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)です。感染経路としては、空気感染、飛沫感染、接触感染などが挙げられます。潜伏期間は2~7日程度です。

よくみられる症状ですが、発症初期は風邪と同様で、発熱、鼻水・鼻づまり、咳、喉の痛みなどです。軽症であれば1週間程度で症状は治まるようになります。小児の場合、重症化するリスクは少ないとされています。ただ小児ぜんそく等、基礎疾患のあるお子さまは重症化する可能性があります。なお小さなお子さまは、症状を自ら訴えることは困難な状況です。新型コロナウイルス感染症に限ったことではありませんが、原因が特定できない発熱が続いている、苦しそうに呼吸をしている、何も口にしたがらない、ぐったりしているなどの症状がみられるのであれば、速やかに医療機関を受診されるようにしてください。

治療について

現時点で特効薬はありません。対症療法として、解熱鎮痛薬や咳止めの薬が処方されることがあります。子どもの場合、軽症で済むことが多いので、対症療法と安静に過ごすといったことが中心となります。

突発性発疹

ヒトヘルペスウイルスの6型もしくは7型に感染することで発症する感染症です。同ウイルスは、健康な方でも唾液などに含まれるものです。患者さまの大半が1歳未満で罹患するのも特徴のひとつです。

主な症状ですが、何の前触れもなく、39度前後の発熱が3~4日ほど続くとされ、熱が下がっていくと同時に発疹が全身に現れるようになります。発疹(赤いブツブツ)自体は、3~4日ほどで消えるとされ、跡が残るということもないです。このほか、下痢等の症状がみられることもあります。痛みやかゆみの症状が出ることはなく、発症中も元気でいることが多いですが、熱性けいれんが併発する可能性はあるとしています。

治療について

原因のウイルスに対する特効薬はなく、必要な場合に対症療法による治療が行われます。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスに感染することで引き起こされる感染症です。感染経路は、飛沫感染や接触感染で、1~2日程度の潜伏期間を経てから発症するようになります。

よくみられる症状ですが、まず突然の高熱(38度以上)と寒気がみられます(発熱は3日程度で治まります)。また、鼻水、喉の痛み、咳等の風邪のような症状、頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節の痛みなどももみられます。乳幼児では、腹痛、下痢、嘔吐等が現れることもあります。また小児では、合併症として、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎を起こすこともあるほか、可能性としてはまれですがインフルエンザ脳症を引き起こすこともあります。

治療について

インフルエンザには抗ウイルス薬もあります。発症後すぐに服用することができれば、発熱期間を1日程度短縮できるようになるとされています。ただ多くの患者さまは対症療法として、熱を下げる解熱剤、咳止めなどを使用し、あとは安静に過ごしていきます。なおインフルエンザを発症して5日が経過し、さらに熱が下がって2日過ぎたという場合に登校が可能となります。

RSウイルス感染症

RSウイルスに感染することで引き起こされる感染症です。感染経路は、飛沫感染や接触感染です。2~8日程度の潜伏期間を経てから発症します。

主な症状は、発熱、鼻水、咳といったかぜ(風邪)のようなものです。6ヶ月未満で罹患したり重症化すると、咳がひどくなる、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューの呼吸音)、呼吸困難などがみられ、細気管支炎や肺炎に至ることもあります。

同疾患は1歳までに半数以上が感染し、2歳までにほとんどの方が1度は感染するとされている感染症でもあります。

治療について

同疾患に対する特別な治療法はなく、症状に合わせた対象療法となります。苦しそうに呼吸をしているのであれば、吸入薬や去痰薬を使用し、入院する乳児も多くいます。

ヒトメタニューモウイルス感染症

ヒトメタニューモウイルスと呼ばれるウイルスに感染することで発症する呼吸器感染症で、気管支炎や肺炎を引き起こすようになります。幼児(主に1~3歳)に流行しやすいとされますが、成人にも感染します。なお乳幼児や高齢者が罹患すると重症化する可能性もあります。感染経路は飛沫感染や接触感染とされ、4~5日程度の潜伏期間を経てから発症するようになります。

同感染症の症状としては、発熱(4~5日程度)、鼻水、咳(1週間程度)等です。症状を悪化させると喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーの呼吸音)、呼吸困難なども見受けられるようになります。症状がみられるのは1週間程度ですが、何度か感染することで免疫がつくようになるとされています。感染し続けることで症状は軽くなっていきます。

治療について

同ウイルスに効く特効薬はありません。症状に合った対症療法が中心となります。

マイコプラズマ感染症

細菌の一種であるマイコプラズマに感染することで、かぜ(上気道炎)や肺炎、気管支炎を引き起こしている状態をマイコプラズマ感染症と言います。感染経路は、飛沫感染や接触感染とされ、2~3週間程度の潜伏期間を経てから発症します。主な症状は、咳、発熱、頭痛、喉の痛み、筋肉痛、関節痛、倦怠感などです。

マイコプラズマ肺炎に罹患した場合は、発熱(38度以上が多い)や倦怠感、頭痛などの症状が現れ、その後(3~5日程度経過した後)に咳が現れるようになります。咳は激しくなっていきます。熱は下がっても咳は3~4週間程度続くことになります。また合併症として、中耳炎、胸膜炎、心筋炎などが引き起こされることもあります。

治療について

炎症が上気道、あるいは気管支炎でも軽度という場合は、これといった治療をしなくても安静にすることで自然に症状が軽減されるようになります。ただマイコプラズマ肺炎と診断された場合は、抗菌薬(マクロライド系、ニューキノロン系 等)を用いるほか、対症療法として、咳止めなどを使用していきます。

アデノウイルス感染症

アデノウイルスによって引き起こされる感染症を総称してアデノウイルス感染症と言います。感染経路については、飛沫感染、接触感染等が挙げられます。感染から発症するまでに5~7日程度の期間を要するとされています。

同ウイルスには、型というものがいくつかあります。どの型(50種類以上ある)に感染するかによって症状の現れ方というのが異なります。例えば、子どもによくみられるプール熱(咽頭結膜熱)は、アデノウイルスの3・4・7・11型が原因とされています。夏の季節によくみられ、プールを介しての感染が多いことから一般的にはプール熱と呼ばれます。主な症状は、発熱(39度程度の高熱)、咽頭炎(喉の腫れ、痛み)、結膜炎(目の充血、目やに、目の痛み 等)です。

上記の3つの症状が特徴ですが、型によっては、結膜炎の症状しかみられない(流行性角結膜炎:一般的にはやり目と呼ばれる)、発熱と咽頭痛しか現れないということがあります。このようなケースも含めたものをアデノウイルス感染症と言います。なお同ウイルスは、乳幼児期では胃腸炎(下痢、嘔吐、腹痛 等の症状がみられる)のほか、出血性膀胱炎(排尿時に痛みや血尿がみられる)を引き起こすこともあります。

治療について

同ウイルスに対する特効薬というものはありません。治療は対症療法が中心となります。例えば、結膜炎であれば点眼薬を使用するなどします。また高熱や喉の痛みが続き、何も口にすることができない場合は、脱水症状にならないように水分補給を欠かさないようにしてください。

溶連菌感染症

主にA群溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌に感染することで発症する感染症です。感染経路は、飛沫感染もしくは接触感染とされ、2~5日程度の潜伏期間の後に発症するようになります。

よくみられる症状ですが、発症初期では、喉に腫れや痛み、38~39度の発熱(出ないケースもあります)、リンパ節の腫れなどが現れます。幼いお子さまは、腹痛や嘔吐が出ることもあります。その後、舌に赤いブツブツがみられる(イチゴ舌)、軽度なかゆみのある赤い小さな発疹が全身で見受けられるようになります。

治療について

抗菌薬(ペニシリン系)の内服となります。1~2日程度で症状が良くなりますが、医師の指示通りに飲み続けてください。多くは10日程度は服用していきます。

手足口病

エンテロウイルスに感染し、手、足、口等に特徴的な発疹がみられる状態が手足口病です。主には糞口感染で飛沫感染もあります。3~5日の潜伏期間を経て発症します。乳幼児に好発しますが、学童、成人も感染します。

主な症状は、口内の粘膜をはじめ、手のひらや足の裏に小さな水疱が現れるようになります。手足の水疱には、痛みやかゆみが起きるケースは少ないですが、口内の水疱が破れると粘膜がただれる(潰瘍化)などして痛みが出ることがあります。発熱の症状が出ることもありますが、その場合は38度以下が大半です。発症後、1週間程度で治まるようになるとされています。ただ重篤な合併症として、無菌性髄膜炎、脳炎、心筋炎等を引き起こすこともあります。

治療について

これといった治療をしなくても、自然と治まるようになります。ただ口内に強い痛みがあれば、口内炎の痛みを抑える軟膏を塗布するなどの対症療法を行います。

ヘルパンギーナ

コクサッキーウイルス等に感染することで引き起こされる病気で、夏の時期(5~9月)に流行します。5歳以下の子どもに発症するケースが大半です。感染力は強く、飛沫感染や接触感染でうつるとされ、2~4日の潜伏期間を経て発症します。

よくみられる症状ですが、38~39度の発熱が突然見受けられ、口内の奥には小さな水疱が発生するようになります。発熱は3日程度で下がるようになりますが、水疱が破れ、ただれや潰瘍になれば、喉に強い痛みがみられます。そのため、食べ物やミルクなどを口にするのを嫌がることもあります。

治療について

同ウイルスに対する特効薬はありません。ただ喉が痛くて、何も口にしないということであれば、脱水症状を起こすことのないように水分補給をこまめにすることも大切です。

りんご病

左右の頬がりんごのように真っ赤になることからりんご病と呼ばれますが、正式な病名は伝染性紅斑です。ヒトパルボウイルスB19が原因とされ、飛沫感染もしくは接触感染をきっかけに2~3週間程度の潜伏期間を経て発症します。幼稚園~小学校低学年の世代の子どもが罹患しやすいのも特徴です。

主な症状ですが、先にも述べたように両頬にりんごのように真っ赤になります。その後、手足にも赤い発疹がみられるようになります。その発疹は網目状の模様をしています。なお人によっては、頬が赤くなる前にかぜに似た症状がみられることもあります。

治療について

特別な治療法というのはありません。自然と治癒するようになるので、安静に過ごします。なお発疹によってかゆみがあるとなれば、それに対する対症療法を行うことはあります。

水ぼうそう(水痘)

感染力が非常に高いとされる水痘帯状疱疹ウイルスが原因とされ、飛沫感染、接触感染、空気感染によって引き起こされます。潜伏期間は約2週間です。

主な症状ですが、発熱(37~38度ほど)がみられると共にかゆみのある発疹が現れ、これが全身に広がっていきます。そして、紅斑(赤いブツブツ)は水疱となり、発疹から7~10日でかさぶた化していきます。これが剥がれるまで3週間程度といわれています。皮膚症状以外では、軽い頭痛、食欲不振、倦怠感などもみられることがあります。

治療について

症状に応じて、抗ウイルス薬を使用します。また、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬、水ぶくれなどの皮膚症状に対して軟膏を塗布するなどしていきます。

急性胃腸炎

胃や腸が急激に炎症を引き起こしている状態です。この場合の原因は、細菌やウイルスの感染によるケースが大半で、乳幼児にみられる急性胃腸炎のほとんどがウイルス性胃腸炎によるものです。原因となるウイルスはいくつもあります。具体的には、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスなどです。

主な症状としては、下痢、嘔吐、腹痛などです。発熱は、出ることもあれば、出ないこともあります。注意しなければいけないのは、下痢や嘔吐による脱水症状で、水分を適度に摂取していく必要があります。なおロタウイルスによる急性胃腸炎は5歳までに多くの方が経験するとされ、激しい嘔吐と白っぽい下痢便が出るのが特徴的です。現在はワクチンで予防できるようになりました。

治療について

ウイルス性の急性胃腸炎に特効薬はありません。また下痢止めや吐き止めといった薬は症状を悪化させるので使用しません。基本は、症状が落ち着くまで安静にします。下痢や嘔吐で失われた水分については、脱水症状を防ぐためにも経口補水液などで補うようにしてください。

ノロウイルス

ノロウイルスに感染したことで引き起こされる感染症がノロウイルス感染症です。とくに冬の季節(12~2月がピーク)に起きやすい感染症です。主に感染者の吐しゃ物や便が空気中に広がってそれを吸い込む、あるいは同ウイルスに汚染された食物を口にするなどして感染します。感染力は強く、半日~2日程度の潜伏期間を経て発症します。

主な症状は、軽度の発熱、激しい下痢や嘔吐、腹痛や腹部のハリなどです。水分が一気に体外へと排出されるので、脱水症状が起きてしまうこともあります。

治療について

ノロウイルス感染症に関する特効薬はありません。また、下痢や吐き気を止めるために下痢止めや吐き気止めを使うこともしません。ただ脱水症状が起きないようにするため、経口補水液など水分の摂取は怠らないようにします。発症から1~2日程度がピークとされ、以降は症状がやわらぎ、1週間もしないうちに治まります。基本的には、症状があるうちは安静に過ごすということになります。また感染を拡大させないための予防対策も怠らないようにしてください(手洗い、ウイルスが付きそうな場所は消毒する 等)。